印刷博物館、以前から気になっていて、一度は行こうとは思っていたんですが、自宅でホームページをチェックしてみて、なんと今の企画展開催中、シルクスクリーンの無料体験が出来るというので、昨日飯田橋まで行ってきました。
製本の方は、前に某大手印刷会社で半年ばかりやってたことがあるんですが、印刷の方はまだまだ疎いんでね。
自主学習ですよ。
印刷博物館
http://www.printing-museum.org/駅について、わかりにくい地図から見当付けながら、高速沿いに目白通りを歩いていって約十分強、凸版印刷のビルが見えてきて、そこに印刷博物館はありました。

まわりはGW中のオフィス街なので、人気もまばら。
中も朝開いたばかりの時間なので、がらがらです。
入場料は300円。
地下に降りて行くと印刷博物館です。
まあ写真はだめということで、ホームページの方にガイドツアーがあるので、それでも見て下さい。
http://www.printing-museum.org/jp/exhibition/permanent/index.htmlただ、こっちには詳しく出ていないのですが、入口からいきなり、古代エジプトパピルスの文書や、ハムラビ法典、楔形文字を記した石碑、ロゼッタストーンの模型、古代中国の文字を記した亀甲、そして現代印刷の父、グーテンベルグの記念すべき初めての聖書の版の模型など、なかなか学術的にも歴史的にも、印刷・活字文化を掘り下げた展示になっています。
その辺の入口からの廊下を抜けていくと、本展示会場です。
まあ、実にいろいろなものが展示されています。
旧型印刷機なんかがあるのは当前として、浮世絵の版とか、半導体チップの基板のプリントとか、活字の鋳造法だとか、模型やムービーを使った最新印刷技術の解説もあります。
まあ、コンピュータや印刷機械の普及で、一般にも身近なものにはなっていますが、この印刷技術の歴史の集積というのも大変なものです。
これらがなければ、現代のコンピュータ文化も文明そのものもありえませんからね。
ワープロの文字変換なんて、写真植字とおんなじです。
MACなんて、印刷ベースのコンピュータだと思いますよ。
というより実際に、強力コピー機能付印刷業務全てのプロセスマシンですからね。
アップルの正体は、印刷屋みたいなものなんですよ。
別にアップルに限らず、印刷技術というものは、人類の知と分かちがたく結び付いた、実体のあるリアルテクノロジーだと思いました。
ひととおり見終って、出口に近付いてみると、旧型印刷機?とそのそばにならんでいる活字の棚が見えてきました。
ここが印刷工房でした。
http://www.printing-museum.org/jp/information/floorplan/bottega/index.html中では、何人かのおじさんが、何やら入念に機械の手入れなんかをしています。
とても楽しそうです。
そう、映画で見るような、昔の印刷屋の世界がそこにはありました。
張り紙がしてあって、そこには三時から活版印刷の無料体験が出来るとの告知。
聞けば、シルクスクリーンの方は、二時から五時までのいつでも大丈夫とのことで、食事をしてからまた来ることにしました。
おいしいカレー(後述)を食べてきて、また二時半ぐらいに戻ってきて、予約申込。
限定六名がすぐにいっぱいになりました。
今回刷るのは、短歌なんかを書くのにちょうどいい、『一筆籖』というものです。
長細い便箋に、罫線と模様が印刷してあって、その便箋の左下の隅に自分の名前を活字を拾って版を組み、それを自分で印刷するという課題です。
工房の中に入って、まずはひととおり説明を聞きます。
手渡された鉛の活字の重いこと。
八百字分が葉書大の木箱に収められているものを手渡されたんですが、鉄アレイ位の重さがあります。
活字を拾うという作業も、かなりきつい肉体労働だったんでしょう。
それだけ拾うのに、熟練工で約四十分ぐらいだったそうです。
まさにピッキングの最たるものですよね。
それにくらべると、現代のシリコンゴムの版は、ゴム印とおんなじ。
露光で融かして、版をつくるというのは、革命的に楽な作業です。
ただ、作った後では直しはききませんけどね。
さて、いよいよ、活字を拾う作業の開始です。
すぐに気がつくのが、日本語の字数の多さ。
アルファベット+αですむ欧文フォントとはえらい違いですよ。
自分の名前分三文字拾うのに、一、二分はかかります。
ワープロなんか?が普及しだして、昔こういう仕事をしていた人達が、職を追われたりしたらしいですが、こんなことをやっていてつちかったピッキング能力は、他の仕事でも応用できたんではないかと思います。
そして、活字を拾い終ったら、今度はそれを版に組むわけです。
リアルDPEというか、まさにワープロやHTMLによる文書原稿の作成を、一文字ずつばらばらのはんこを使ってやるリアルな作業です。
もとはここにあったんですね。
隅に名前を入れるだけでも、半角四分の1角の字間をとったり、行間をすべて写らないのっぺらぼうのはんこで埋めたりしなくてはなりません。
それもひとつひとつ、鉛のはんこですからね。
位置を決めるだけでも、一苦労なんですよ。
そうして版が組み終ったら、それをレンチで締めて完成です。
写真でお見せできないのが残念です。
簡易印刷とはいえ、なかなか本格的なものですよ。
そうして組んだ版をセットして、印刷する機械がこれです。
http://www.htypo.net/smt/index/kaijou/b_08/b_08-h.htmlイギリスアダナ社の、簡易印刷機。
要するにクリスマスカードなんかを印刷するのに使う、プリントゴッコのおばけみたいなものなんですが、かなりごついものです。
版をプレスする印刷工が、そのまま機械になったようなデザインで、なかなか味わい深いものなんですがね。
上のまるいお盆に、インクが塗ってあって、版はその下の奥にセットします。
その手前の稼働する部分に、紙を置いて、手前のレバーを上から下へ降ろします。
初めの二回は、レバーを押してローラーを動かし、お盆からインクを付けるため、最後の一回で、紙を版にぎゅっと押しつけて印刷です。
このレバーがものすごく重いんですよ。
がっちゃんこ、がっちゃんこ。
しかし、できあがった作品は、そりゃあ素晴しいものでした!
以前に二度ほど、週刊文春の俳句投稿コーナーに、二週連続して入選し、名前が載ったことがあったんですが、その時以来ですね、本物の活字で印刷した自分の名前を見るのは。
鉛のはんこで印刷されたそれは、そりゃあきれいなものなんですよ。
ぎゅっと版を押しつけて印刷するので、活字のところがへこむんですね。
僕はこれを使って、名刺でも印刷したくなりましたよ。
是非、一度皆さんも、ここで活版印刷体験することをおすすめしておきます。
所要時間は小一時間ほどです。
活版印刷体験が終り、一階に戻って、今度はシルクスクリーンです。
ギャラリーの奥で、実演していました。
こっちの方はいとも簡単。
版はあらかじめ出来たものを使うので、それを紙の上に置いて、盛ってあるインクをこするだけ。
所要時間1分ぐらいでした。
GW中は、休まずやっているそうなので、ご興味のあるかたは、飯田橋まで行ってみて下さい。
捨てがたい、この活版印刷で…